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【145話】「僕のお母さんですか?」

804:1/2:2011/04/21(木) 19:54:06.19 ID:sYapqdpa0

395 :本当にあった怖い名無し:2006/11/24(金) 12:36:34 ID:5ebS3UtO0



少々長い話しになりますが、私の不可解体験を書きます。

「僕のお母さんですか?」

登校中信号待ちでボーっとしていると、突然となりの男が言った。

当時私は20歳の大学生で、妊娠・出産経験は無い。それに相手は、明らかに30を超えていた。

ビックリして、「ひっ…人違いです」と答えると、相手はその答えが意外だったかの様な反応で、

何でそんな嘘を付くの?と言った表情だった。

その反応に私が驚いた。



信号が青になると、私は急いでその場を去りました。

こんな事を言っては失礼だが、障害者っぽい雰囲気で、ガリガリで目はギョロッとしていて、

よれよれのシャツに、肩から黄色いポシェットを下げていた。

これが彼との最初の出会いで、この後数年に渡って何度も彼と遭遇しました。

その日から彼は毎日その場所で私を待っていて、

必ず「僕のお母さんですか?」と聞くのだ。



「違います」そう一言言えば去って行ってくれるので、

気味は悪いが警察に言う程でもありませんでした。

しかしいつの日から、大学にまで現れる様になり、私は彼にきつく怒鳴りました。

二度と現れるなとか、気持ち悪いとか、そんな事を言った気がします。



それからは現れる事も無く、東京の大学を卒業して実家へ戻り、

1年が過ぎたとき、東京の友人から久々に電話があった。

「あんたのストーカー男。こないだ大学の近くで合っちゃってさぁ、

『お母さんはどこですか?』って聞かれて、恐くて逃げちゃった」

と言う内容でした。その話を聞いても、ああそんな男もいたな、

ぐらいにしか感じず、こっちには関係ないと思っていました。

次の年の母の日、玄関に萎れたカーネーションが置かれていました。

私は瞬時に、あいつだ!?っと思い、恐くなって父に相談し、

警察に行ったが相手にされません。

被害と言った事件もなかったので、当然と言えば当然なのですが、

私は不安で仕方がありませんでした。

805:2/2:2011/04/21(木) 19:54:30.89 ID:sYapqdpa0

396 :本当にあった怖い名無し:2006/11/24(金) 12:38:07 ID:5ebS3UtO0



そして数カ月が経った、雪が積もる夜の事です。私は街の歩道を歩いていました。

すると突然車がスリップし、玉突き事故に巻き込まれたのです。

一瞬意識を失い、次に気付いた時は車と倒れた木の隙間でした。

体中が痛くて身動きがとれず、声を上げても、

周りは騒々しく誰も私に気がついてくれません。

隣では火も上がっていて、もう駄目だと思ったとき、

「おか~さ~ん、おかあさ~ん」

あの男の声がしました。

私は思わず、



「ここ!!助けて!!ここにいるの!!」と叫びました。

彼も事故に巻き込まれたのか、血まみれでした。

雪を掻きわけ私を引っぱりだしてくれた彼を改めて見ると、彼の方が重傷に見えました。



とても痛そうだったのに、彼は私を見て笑って、「お母さんですか?」と聞きました。

私は何とも言えない気持ちになり、「…うん……うん」とうなずき、ぽろぽろと涙を流しました。

涙を拭い顔をあげると、彼の姿はそこにはありませんでした。

ほんの一瞬で消えたのです。



それっきり、もう何年も彼を見ていません。

いったい彼が何だったのかは分りませんが、幽霊と言う物ではないとは思うのです…



雪が降ると時折思い出します。名も知らぬ息子の事を。


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